日本高血圧学会 実地医家部会初代部会長(現、顧問)

日下美穂先生

我が国で罹患率の一番多い疾患である高血圧を担う日本高血圧学会は、学問的な研究だけでなく、予防治療を国民全体に深く浸透させ、国民の健康に貢献する使命がある。

その真の実践者は、高血圧学会会員の中でも、高血圧の診療に関して、実地臨床の経験が豊富で、一番地域の患者、市民に近く、またその地に長年留まり地域医療を支えて貢献する覚悟をした開業医を中心とする実地医家である。しかし大学や研究施設、基幹病院勤務を終え、研究生活から離れた実地医家は、学会での発表の必要も、活動の場も、居場所もなくなり学会を退会する事が多いのも事実であリ、能力も経験も豊富な会員を失うことは、学会にとっても損失と考えられる。

そこで、本部会は、高血圧学会の使命を地域において隅々まで真に実現させるために、実地医家がお互いに連携を図り、大学や基幹病院の先生方とも連携し、地域に根付く高血圧予防治療を実践し、また継続的な啓発活動を展開し、国民の健康寿命延伸と高血圧学会の発展に寄与するため、2018年5月に発足した。現在、各都道府県より50名を超える委員が就任し、随時、理事の先生方から推薦していただいた委員も増えている。この委員が連携協力して喫緊に迫っている高血圧ガイドラインの実地医家への周知徹底とともに、その先にある降圧目標順守率の向上のために、従来の高血圧学会の考えをさらに発展させ、全国津々浦々への働きかけたいと考える。現時点での活動方針として下記内容を考えており、理事会の意向を反映しながら、出来るところから確実に実行していきたい。

   日本高血圧協会、高血圧・循環器病予防療養指導士制度、高血圧診療マスタークラス講習会とも連携して高血圧診療の向上を目指す→Future Planの目標達成に貢献

   総会や臨床高血圧フォーラムのセッションなどで会員の先生方との情報共有、ディスカッション、連携の場を設けていく→会員のモチベーション向上、今後の活動へ反映

   地域における啓発活動は、他の委員会とも連携して、地域内の会員が協力して実行する→生涯教育・チーム医療委員会、Future Plan推進委員会と連動

   国民の健康を長いスパンで改善するため、行政と連携して、子どものころからの減塩などの生活習慣に実地医家が介入するなど→③に同じ&減塩委員会、ダイバーシティ推進委員会とも連携

   実地医家の実のあるネットワークづくり→今後予想される地域における臨床研修(外来などでの実習義務化)や総合診療医の研修の場として利用されるためにも本学会所属の実地医家のレベルの底上げが急務

   実臨床に役立つデータベースづくり→新臨床研究法にも合致した形で、ガイドラインの根拠(あるいは検証)として使えるような臨床研究の立ち上げを目指す

 

JSH2019 ガイドライン発行も控える中、国民や高血圧患者の健康寿命延伸を支援することを目指し、降圧目標の達成率向上など、今後益々実地医家の担う役割は大きくなって行くものと思われる。

実地医家部会の活動にご理解、ご協力を賜れば幸いです。  

 

                                        20181223日 実地医家部会部会長 日下美穂